高知石灰工業株式会社

漆喰のこと

漆喰(しっくい)とは?About plaster.

漆喰の元となるサンゴ礁

漆喰(しっくい)は石灰石(炭酸カルシウム)という鉱物を焼成・消化してできる消石灰(水酸化カルシウム)を主原料とした建築材料で、主に建築物の内壁、外壁の上塗りや屋根瓦の目地充填などに使用されます。左官職人による鏝(コテ)塗り作業他、刷毛など様々な道具により施工される左官材料です。

 

 原料となる石灰石の元は海に生きる珊瑚礁。

数億年の時を経て地殻変動をくり返し陸となり、世界各地の鉱山で採掘されています。

 

その石灰石を焼成・消化してできる消石灰は、空気中の二酸化炭素(CO2)と反応して自ら固まり、元の硬い石灰石に戻る性質があります。

この消石灰の性質を活かし、ひび割れ防止のスサ(植物質繊維)、作業性向上のための糊材(海藻のり)を添加したのが漆喰(しっくい)です。

 

 

 

石灰石から漆喰へ

自然の力で固まり、石灰石にもどる不思議な壁材

漆喰の歴史と変遷History and vicissitude of plaster.

漆喰の歴史

スペインの白い街並み

スペインの白い街並み

~世界共通の壁材・漆喰~

 漆喰の原料となる石灰石は、日本はもとより世界中で産出され、石灰モルタルなどの石灰系塗装・結合材が施工された歴史は五千年前まで遡り、古代エジプトのピラミッド、万里の長城のほか、ヨーロッパでの歴史は特に古く、古代ギリシャやローマ時代の遺跡にも多くの使用跡がみられます。

 

 

昨今ではイタリア、スイス、フランス、スペインなどヨーロッパ各地の漆喰(石灰系壁材)が日本にも輸入され紹介されています。

世界最古の木造建築物 法隆寺

世界最古の木造建築物 法隆寺

日本においても高松塚古墳の壁画や法隆寺(飛鳥時代 西暦592年~700年頃)など、様々な場所や用途でその優れた特性を発揮しています。自然の作用で100年以上固まり続け石に戻る漆喰壁の堅牢さは、世界中で多くの歴史的建築物が物語っています。

 

 

 

日本における漆喰 

白漆喰で塗られた姫路城

~古き良き壁・漆喰~

 日本での漆喰塗りの歴史は1300年前まで遡り、建築材料として使用されたのは平安時代初期の神社仏閣建築からと言われています。戦国時代には各地で盛んに築城された城郭建築によって、眩しく輝く白壁が富みと権威の象徴となり、また機能面では壁としての耐久性の高さと防火性により城郭や財産を守るために使用されました。

 

 

その後、江戸時代にはそれまで米のりを入れていた高価な漆喰から、比較的安価な海藻のりを使った漆喰が登場し武家屋敷や商家の土蔵などにも使用されるようになり、漆喰は身近な壁材として長い歴史の中で親しまれてきました。

旧家の町並み

このように日本の気候風土に適した建築材料として1000年以上の長きにわたり使用されてきた漆喰ですが、時代は流れ昭和に入ると第二次世界大戦後の高度経済成長による住宅需要の増大と、急速に開発が進んだ石油化学製品の多用により、住宅建築は時間と手間のかかる従来の工法から、より効率的で簡易な工法に移り変わり、しだいに日本の住宅から漆喰などの伝統的な湿式工法は姿を消していきました。

 

 

変化した住環境 

~自然素材が消えた家におこる様々な問題~

日本の住宅は高度経済成長期を境に、より快適性を求め省エネルギー対策を重視することで「高気密・高断熱化」を追及した住宅が一般的になっていきました。そして大量生産、工期短縮の名のもとに新築住宅に使われる建材は価格(低コスト)と利便性を優先した自然素材風の石油化学製品にとってかわり、それまでの家に使用されてきた本物の自然素材は、時代の流れとともに日本の住宅から激減していきました。

 

古くからの生活様式を捨て、より便利で快適な社会生活を手にいれることにより戦後わずか50年余りで急激に変化した住環境と、現代日本人の生活習慣から問題となってきたシックハウス症候群、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー。様々な石油化学製品に含まれる有害化学物質が原因でおこるシックハウス症候群などの健康被害は、購入した新築住宅やマンションに住めなくなる人が出るほどの深刻な事態を引き起こしています。

 

吐き気、倦怠(けんたい)感、頭痛、呼吸困難、めまい、咳が出る、目の痛み、寝不足、アレルギーなど、発症した場合の症状や度合いは人によって様々ですが、高気密住宅の増加に伴う室内の化学物質濃度の上昇による、有害化学物質への過剰防衛反応が主な原因と考えられています。

見直される自然素材 

木と漆喰が調和した空間

~人を優しく包み込む本物の木や漆喰~ 

シックハウス症候群など、変化した住環境が原因と考えられる多くの問題を解決すべく昨今では、バリアフリー化、省エネなど、住宅としての性能を向上させつつ、日本の気候風土に見合った昔ながらの自然素材を適材適所に取り入れた住宅が少しずつ見直されています。

 

「高気密・高断熱の家」だからこそ、家の中の空気ができる限り有害化学物質の無いきれいな空気であることは、住宅の耐震性や耐久性と同様に優先されるべきことではないでしょうか。

 

シックハウス症候群や化学物質過敏症は同じ住環境にいても発症する人とそうでない人がおり、その症状も人によって様々です。私たちは生まれながらにして多くの化学物質に囲まれて暮らすことを強いられています。より便利であること、より快適であることへの追求が、実は地球環境や人にとって様々な弊害があることに気づいたときは、まず、身近な家族のかけがえのない健康を守ることを考えてください。

 

本来、人が自然の中で暮らしてきたように、家族が長い時間を過ごす空間を無垢の木や漆喰・和紙など本物の自然素材で包み込むことによって、そこに住む家族全員が健康障害を招くことなく、本当に気持ち良く呼吸できる心地よい場所をつくることができます。

漆喰の特徴Characteristic of plaster.

漆喰の特徴

安 全 性

~塗る人、住まう人、みんなが安心な自然素材~

四国カルストから産出した非常に純度の高い高知産の消石灰を主原料に、大理石粉、麻すさ、海藻のりなどを使用しています。自然素材である漆喰は、アレルギーの原因となるホルムアルデヒドなどの有害化学物質を含んでいないので、安全で無害な壁材として赤ちゃんのいる場所でも安心して使用できます。

※漆喰は強アルカリ性ですので、施工作業時には手袋等の対処をしてください。

乾燥後は直接漆喰壁に触れても問題ありません。

 

 

調 湿 性 

~夏のジメジメ感を解消!美味しい空気をつくります~

漆喰の塗り壁は多孔質な素材のため常に呼吸をしています。塗り壁自体が呼吸することで、タバコなどの臭いや有害化学物質を吸着・分解し、お部屋の空気をいつも清浄に保ちます。また、湿気を吸収するので、湿度の高い夏はジメジメ感を解消し、サラッとした爽やかな空気をつくり、冬は外気温との温度差による結露が発生しません。

 

防 火 性・断 熱 性 

~燃えない壁!万一の火災時も有毒ガスが発生しません~

本物の漆喰は非常に防火性が高く、建築基準法第2条第9号において不燃材料に認定されています。万一の火災時にもダイオキシンなどの有害なガスが発生せず、延焼を防ぎます。この特性は昔の城壁や土蔵にも活かされました。また、漆喰壁は多孔質で空気層をもつため断熱性が高く、室内の涼しさ、暖かさを保つ働きがあります。

 

 

デ ザ イ ン 性 

~表面仕上げ、色付けなどにより世界にひとつだけの漆喰壁を~

漆喰には独特の自然な風合いと質感があります。施工道具や塗り方を工夫することによって様々な表情に変化し自由なテクスチャーを楽しめます。天然土や色粉(ベンガラ)を混ぜたカラーバリエーション、ワラスサを表面に見せてより自然を感じる仕上げなど、発想は無限に広がります。

 

 

抗 菌 性 

~細菌を撃退、カビやダニの発生を防止します!~

漆喰は強アルカリ性のため殺菌効果があります。結露をなくす調湿性能とのダブルパワーでアレルギーの原因となるカビ・ダニの発生を防止します。

鳥インフルエンザの際にも、漆喰の主原料の消石灰が養鶏場に殺菌の目的で散布されています。

 

 

吸 着 性

~ホルムアルデヒドを吸着・分解!~

シックハウス症候群の原因のひとつであるホルムアルデヒドを吸着・分解し無害化します。

漆喰の主原料である消石灰は強アルカリ性であり、空気中のホルムアルデヒドが漆喰壁に触れると消石灰のアルカリ分子と反応することでホルモースという糖類に変化します。(ホルモース反応)

 

 

堅 牢 性

~100年以上固まり続ける石のように強固な壁!~

漆喰は左官材として壁に塗られた後、ゆっくりと乾燥硬化していくプロセスの中で空気中の二酸化炭素を吸収し、100年以上の歳月をかけて元の石灰岩と同じ炭酸カルシウムに戻っていきます。時が経つにつれて耐久性が増し堅牢な壁になります。

 

 

環 境 性

~環境負荷のない、自然にかえるエコロジー素材~

漆喰のベースは石灰。もともと地球の資源から生まれた自然素材なので、その役目を終えれば、またもとの自然にかえります。漆喰は、廃棄処分時におけるダイオキシンやアスベストなどの問題は起きません。本当の意味で自然と共存できる素材なのです。

 

 

漆喰の素材Material of plaster.

消石灰

石灰石を焼成し生石灰となり、それに水を加え水和反応させてできる漆喰の主原料。写真中央が消石灰。その後ろ左が石灰石、右が生石灰。

▶詳しくはこちら[石灰のこと]

 

 

 

海藻のり

天然の海藻から抽出したのり材。漆喰に粘りをもたせコテ塗り作業をスムーズにし、保水性を高めることで漆喰の急激な乾燥を防ぎ、ひび割れを軽減する役割。

写真の左が海藻のりの一種「銀杏藻」。右は「既調合漆喰」用に粉末にした状態。

 

 

 

麻すさ

輸入品の豆類などを入れた麻袋を粉砕加工してできる天然繊維。

ひび割れを防止し漆喰壁の耐久性を向上させます。

 

 

 

 

石灰系骨材

大理石粉。石灰石と同じ炭酸カルシウム。漆喰の乾燥時におこる収縮を抑えひび割れを軽減し、漆喰壁をより硬く丈夫にします。